蝶の骨
はるな



わたしは立っていて
ひどく空腹で
おまけにあなたはいなかった

笑えるほど大きな棚を開けると蝶の骨が入っていて
いくつもいくつも入っていて
ほとんど重さもないようなそれを
いくつも口へはこんだ

許されたり 愛されたり
したかった
かんたんに抱かれたり 嫌われたりもしたかった
花を贈ったり
もらったりしたかった

蝶の骨はいくつもいくつも入っていて
わたしは立っていて
あなたはいなかった
覚えていたくなかったことのすべてをすみずみまで覚えている





自由詩 蝶の骨 Copyright はるな 2016-11-07 00:56:28
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