みかんのきせつ
村乃枯草

わたしは
みかんのきせつが
すきだ

ひとがうずまるほどの
おおきなはこに
みかんをいっぱいにつめて
わたしはそのなかによこたわり
おしつぶされたみかんの
あまいかじゅうは
みぎめとひだりあし
しぶいかわのあぶらは
ひだりてとしんぞうのうえに

風はかじゅうにふれて
からだにまとわりつく
きかねつが体温をうばう
わたしははいまわるありをつぶさず
ねがえりもうたず
耳をすませる

まわり数メートルのくうきが
みかんの香につつまれ
からだはただの質量とかして
あざけりもこんわくもすべてを聞き
みかんの甘さがしみたわたしは
大気のそこにしずんでいく

とおくからきた椋鳥が
果汁のかかったみぎめをつつき
あなの空いたがんきゅうに
そらからの光がさしこむのをかんじる

せかいは
おろかものを受けいれるほど
豊かだ

わたしは
みかんのきせつが
すきだ


自由詩 みかんのきせつ Copyright 村乃枯草 2016-11-06 13:27:05縦
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