青いままで
ただのみきや
ほそく
だけどまわりの庭木よりたかく
そよいでいる
白樺の梢の辺り
黄ばんだ葉の疎らな繁りにふと
青いまま
いくつか
乾きながら
さわさわと光にそよいだころの
面影を残し
切れ目なく薄い雲が覆う
つめたいまなざしの
無限に
娘軽業師の小刻みに震える細腕
ぶら下がる
乾いた蝶
いつまでだろう
白濁した
秋の
達観した
ひとみのなかの微小な
一点の揺らぎ
ですらなくなって
――ほつり と
駆けだした落ち葉の群れ
虚空の路
ふり返っては
風に破られて知る
薄い紙の張りぼてだった
がらんどうの胸
青くふるえていた
ものの
喪失が
いま
巻き戻し
再生され
くり返し
喪失が
膨らんで満ち
溺れる空ほどの非在を包む紙のからだ紙のこころ
紙の海を泳ぐ魚の群れ紙の天を飛ぶ鳥の群れ
紙の街を歩く紙の恋人たち
それら編み上げられた祭壇に
火を放て
一斉に飛び立つ枯れた蝶の群れ
つむじ風の祝詞は
目よりも耳よりも
今ここに刺す
《青いままで:2016年11月5日》