舞台の中で生きるように
葉月 祐






赤い太陽との抱擁を済ませ
黒い月のスポットライトの下に潜り
透明な音譜に髪を靡かせながら


白い台本の世界の 夜の扉をひらく


ヘッドライトが生み出す一瞬の星座
頭上の宝箱には ガチャリ 鍵がかけられた

月の輝きも 星のうつろいも
雲の向こう側へと捌けていった


視線を平行に保ち
心を水平にすれば
身近な世界は
傍で瞬きを繰り返している


起きながらに迷い込む 小さな夢の国
境目は常に曖昧で
だからこそ際立つのが現実ってものだ


人生はいつも舞台の上で
リハーサルなんて無い
私は白紙の台本を握り 新しい夜へと向かう

時には虚構を
一匙だけ混ぜ合わせてみたりして
逃げ出す事の出来ない
ステージに立ち続ける


未熟な主人公が持つただ一つの祈りを片手に

暗闇に潜む観客達の透明な視線に応える様に





もしも この舞台が破綻していたとしても

生きている限り 緞帳が下がる事は無い

途中降板が許されない 一冊だけの台本の世界で

私達が生きる唯一無二の時を生き続けよう

喜劇と悲劇の狭間の行き来を繰り返して

たとえ今が 悲劇の真っ最中だとしても!



見届け 見つめていかなければならないものがある



深夜の国の色を放つホリゾントを背にして
いつでも私は 私を上書きしていく未来を望んでいる
だれもかれも 他の何者にもなれやしない
 

代わりはどこにもいない



私は今夜も生きて 重たい扉をまた開ける
姿を持たない願いと祈りを
目に映らない風の隙間に
隅々まで織り込むように 

感じたままに うたいながら
きっとまた 舞台の上に立っているだろう









                        2016/10/15


自由詩 舞台の中で生きるように Copyright 葉月 祐 2016-11-05 17:46:37
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