声を掛けた
花形新次

文化の日の朝
平塚駅のホームにて

初老の男性と
若い男性が
手を繋いで歩いていた

行き交う人々のうち
気付いた人は
一様に訝しげな
表情を浮かべていた

しかし私には分かった
その若い男性の仕草で

何度も同じ独り言を呟き
顔の横まで上げた片方の手を
ヒラヒラとなびかせていた

それはついこの間22歳になった
私の息子がする仕草と同じだった

もっと言うと
私ももう初老と言っていい年齢だし
息子と手を繋いで歩くのも一緒だった

だからどうだと言う訳じゃない

ただ、彼らの後ろ姿に向かって

「お互い、頑張りましょう」と

小さく声を掛けただけ






自由詩 声を掛けた Copyright 花形新次 2016-11-04 19:10:11
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