声を掛けた
花形新次
文化の日の朝
平塚駅のホームにて
初老の男性と
若い男性が
手を繋いで歩いていた
行き交う人々のうち
気付いた人は
一様に訝しげな
表情を浮かべていた
しかし私には分かった
その若い男性の仕草で
何度も同じ独り言を呟き
顔の横まで上げた片方の手を
ヒラヒラとなびかせていた
それはついこの間22歳になった
私の息子がする仕草と同じだった
もっと言うと
私ももう初老と言っていい年齢だし
息子と手を繋いで歩くのも一緒だった
だからどうだと言う訳じゃない
ただ、彼らの後ろ姿に向かって
「お互い、頑張りましょう」と
小さく声を掛けただけ