夏をみる人 
白島真

           

 あなたは夏をみる人だ
 うつむいたレースのカーテン越しに
 あなたは白い夏をみるひとだ
 窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて

 
 花模様のレースの編み地には
 猫の引っ掻き傷と
 とれない汚れがほほえましい
 編み目が透明なガラスをはさんで 庭を映す

 
 手入れをしない原生林のようなみどりの庭を
 あなたは好む 
 それでもやや正面右の猫の墓たちの
 周りはおしろい花や紫陽花を植えて

 
 「移り気」という花言葉を思いながら
 あなたはもう 見られている
 紫に朽ちかかったがく、猫たちの瞳から
 一枚のガラスと編み目を通して

   
   風は聞こえない
   梅雨のなごりのにおいさえ
  

 振り向いたあなたは
 わたしをみる わたしに見られている
 夏の陽光を背にうけたあなたは 
 レースのこちら側で
 白い夏をみるひとだ       

      


自由詩 夏をみる人  Copyright 白島真 2016-11-04 08:33:35
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