エピローグ
坂本瞳子

供されたお茶は
どうしたって危険で
口を付けるのが恐いのだけれど
いただかない訳にはいかなくて
ただ眺めているだけにはいかなくて
もうなんとも誤魔化しようがなくて
だからといって逃げ出すこともできなくて
なんとも居た堪れないでいるところ
四時を告げる鐘が鳴る

しばらくは余韻に浸っていられる
鐘の響きを愛惜しむような振りをして

たかが知れている束の間ではあるが
救済の刹那が訪れるのではないかと
この上ない希望を抱くことができるのも
決して大袈裟でも嘘でもない

さてどうしたものか
この先のことを考えてみるのも嫌だけれども
このまま放置してはもらえない
いよいよ覚悟を決めてこのお茶を飲むか
ちょっと口を付けるだけにするか
それとも一気に飲み干すか
どうしたものかと考えあぐねても
永遠にこんな時間は続かない

いっそのこと気を失ってしまいたい
なにごともそんなに都合良くは行かないけれど
こうしていることにほとほと疲れ果ててしまった
だからもう終わりにしたい
もうこれで終わりにさせて欲しい
終わりにさせてくれ
終わらせてくれ
終わりにして
終わり


自由詩 エピローグ Copyright 坂本瞳子 2016-11-04 00:48:34
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