白猫語り
為平 澪

母猫が事故死して母乳の味を覚えることなく、
共に産まれた兄妹が運ばれた行方も知らず、
ただ何となく頭を撫でてくれる手を信じて、
呼びかけてくれる瞳の輝きに返事して、
春はご主人様たちとよく眠り、
夏に目覚め、秋には遊び、
冬に外の景色をじっと眺める。

そんな日々の中で、
一人いなくなり、二人いなくなり、
長生きすればするほど優しい手のひらたちの
温度が失われていくのに、
アタシだけ、白く、生き残りました。

明日、雪遊びに行きます。
白く埋もれて眠る毛のささくれた猫を見たら
踏みつぶさないで「よく頑張ったね」って、
ひとこと声を被せてください。

        ※

(独りでも天国に行けそうな気がします)




自由詩 白猫語り Copyright 為平 澪 2016-11-03 22:10:51
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