ひとつ 冷笛
木立 悟






深夜の白く澱んだ曇から
硝子の光が降りつづいている
枯葉と鉱のはざまの音が
甲と指を擦っては落ちる


あちこちに
赤く乾いた小さな実が散らばり
時おり虫のように震え
じっとしている


長い下り坂の終わり
双つの霧の祭
無数の鏡の径
姿だけが帰る径


腕の前に回る腕
Xに零 Yに無限
縦と横の笛の冷たさ
常に倒れ 受け入れる笑み


動かぬ機械が並ぶ部屋から
灯りが漏れている
金属の扉 夜の重さ
夜の遠さ


三叉路は浅く影を梳き
壁は蒼く漬されて
曇は再び霧の手を取り
宙の虹彩をうたい出す


























自由詩 ひとつ 冷笛 Copyright 木立 悟 2016-11-03 13:10:26
notebook Home 戻る