葡萄
葉月 祐



食べ頃を通りすぎた
一房の葡萄の実は
ぽろぽろとその房から
こぼれ落ちていく


一粒ちぎれていく度に
甘い香りがそばに漂って
服に染みついた気さえする


真昼の内から
夜の色をした
ころころしたその実にかじりつき
むさぼり食らった


ほんのりと
アルコールに似た香りが
口内に広がるのを感じていた

 

  じゅくじゅくとした
  その甘味に酔っていく



いけない事をして
隠し事をしなければと
慌てる小学生のような気持ちを
噛み締め味わう ひととき


実が無くなる
その速度は
少しずつ増していき
 


  茶色く枯れた果梗だけが
  あとに残された



その実を包んでいた
皮の苦味が
微かな痺れを舌に残し
遅れて心に届いた 気がした



皿の上に残されたものから
一瞬 目をそらして
最後の痺れを飲み込んだ













自由詩 葡萄 Copyright 葉月 祐 2016-11-01 11:20:33
notebook Home