自販機の女神
TAT
自動販売機の横にはたいてい美しい女神が立っていて
ジュースを買うたび僕に微笑みかけてくれる
僕は物心ついてからいつも
彼女たちに惹かれてきたし
話しかけたり
誘ってフラれたり
会釈したり
そんな風にして生きてきた
コーラの横にはだいたい金髪の女の子が立ってるし
サントリーだと茶髪が多い
伊藤園はもっと若い中学生風で
チェリオは総じて美貌が凄い
ごく稀に売上主義の大型モールとか
屋外に乱雑に並べられた錆びた自販機だと
女の子が立ってないのも見かけるけど
そういうのはやはりすぐ撤去されてる
居心地が悪いと当然寄り付かないし
女神様が憑いてないと流行らないんだろうね
最近知って驚いたのは
みんなにはそれが見えていないという事で
僕は愕然としたんだけど
じゃあなぜみんな自販機でジュースなんか買うんだ?
ジュースが飲みたいそれだけで
ジュースを買ってるとでも言うのか?
じゃあアイスクリームの自販機の横には冷たい女の子が立ってるのかとか
コンドームの自販機の女神様を今度紹介してくれよとか
同僚たちはニヤニヤしながら僕を嗤うけど
馬鹿じゃなかろうか
ジュース以外の自販機に女神様が立ってる訳ないじゃないか
気高く美しい彼女たちはまるで
ユーカラを唄うアイヌの始祖神のようだ
アボリジニー カラバリー 夢の時代
インディゴの風のようだ
太陽王の時代から
僕らは美しい女神様の奴隷で
月にも自販機は
あるんだよ