かざぐるま
あおい満月

唇に針を刺して、
ぐるぐるとかき混ぜる。
歪んだ赤い月が、
いくつもうまれる。
その月のなかに、
あなたが映っている。
人形を抱いた幼いあなた。
小さなあなたは泣いていた。
唇をかみしめて。
かみしめた唇から、
血を滲ませて。
ぐるぐるに撹拌される月を、
あなたはみていた。
月がまわるさまに指で触れて、
あなたはこちらの世界と繋がる。
私も月に指で触れてみる。
あなたの指と繋がった。
その指は、
どこか懐かしい体温がした。
(お母さん)
どこからか声がした。
向こうの世界のあなたが私を呼んでいる。
生まれる筈だった娘のことを、
忘れてはいない。
一輪の赤いダリアを手に、
風車が揺れるあの丘にいく。
風に向かい、
あなたの名前を呼ぶ。
声は風にとけていく。
また明日がはじまっていく。



自由詩 かざぐるま Copyright あおい満月 2016-10-29 09:22:58
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