水底のアダージョ
レタス

深い
深い水底に
白骨と化した彼は
舵輪を握り締め
遠くを見据えながら佇んでいた

時折深海魚が目の前をゆらゆらと通り過ぎ
彼の頭蓋骨が優しく頬笑む

艦長は静かに椅子に座り
今は見えない敵を凝視し
その指令は冷徹だった

魚雷は既に1本しかなく
止めどなく敵艦を探し
時に深い眠りにつく

航海士の彼は休むことも無く
海底から敵艦を探していた

青白い臨海の光だけが彼を照らしていた


自由詩 水底のアダージョ Copyright レタス 2016-10-26 16:43:47
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