部屋の中の満月
葉月 祐
普段はつけずに眠る
豆電球の明かりを残した
それを月に見立てたら
荒んだ胸のうちも
いくらかは
和らいでくれるだろうか
この開きやすい扉の鍵は
まだ 開かないでいる
これを一度開けたが最後
弱音も毒も
言いたくもない事すべて
流れ出して
とまらなくなってしまいそうなのだ
最後の力を振り絞り
私はこの扉を 抑える
誰もが無意識にコントロールしている
当たり前の事を
強く意識しておこなう
手の平で
軽く目元を押さえたまま
眠らなければならない
自分の弱さも脆さも
否定はしない
部屋に浮かぶ
橙色の小さな満月が
滲んで揺れている
ああ
ああ、