神からもらった新品のバッシュ
コトコレ
「うわなにそのバッシュどこのメーカー?」
「神。」
「は?」
「神からもらったんだ」
おまえらには触らせねーよとか
はいはいわかってますよーとか
いつもの流れ。
でもアのバッシュ、マジ羽生えてる
さわさわと風をつかみそうな
青くてひかる、半透明の
「どんなダンクでも打てんぜ。
飛べんだからトラベリングしねえし」
小西あたまわるいから嘘つけない小デブだし
ほんとにワルいやつは
きっとンなもん見せたりしないし
放課後のグラウンド
あつまったのは
ヒマだから。羨望だとか
ついにあいつも狂ったかとか
外でバッシュはいてんじゃねーとか
口がへの字の
ホームランバー
小西、試運転
「マジ無敵」
神からもらった新品のバッシュに
ほとばしる青い閃光
そのつばさはわさわさとひろがりながら
ひとつかみで
あたりの空気すべてをかっさらい
「GOGOHEAVEN!!」
一瞬だった
バッシュの昇天力にたえかねた小デブの小西が
後転し
後頭部を打った
「ガエ……」
意味をなさない音声を残し
さかさバンザイの小西は
とんでもない速度で夏空のむこうに召されていった
金星でるあたりだ。さっき習った
おい、小西
ひっくりかえってんだから
そっち天国じゃ
ねえかも
よ
ひらひらとおちてきた青い羽
ぶっそうだから
かわるがわるに踏んづけて
おれたちはかえった
そしてなんにも説明のない
気づまりな日常がやってくる