スパイシー
坂本瞳子
いつからだろう
やらなくてはならないことが
できていなくても気にならなくなったのは
宿題や持ち物を
絶対に忘れることなどなかった
あれはもう遠い昔
いい加減にしても誰にも怒られない
あまりの疲れに何事も手につかない
眠りたいという気持ちだけが空回りしている
稀に街角で見かける緑が眩しくて
大きく息を吸うことが躊躇され
それでも存在することを続ける
できないことがあってもいいのだと
そう思えるようになってからは
また陽射しを浴びられるようになった
月の光に癒やされる夜もあるけれど
風が吹き荒ぶこともあるのだと
身に沁みて
生きることのエグミを味わっている