秋の暮れ
Lucy
沈殿する鉛の溶液
筏の上を旋回する風
雨燕の航跡に
月の光を編み込んで
透かし見る夕暮れの
押しボタン式信号機
「おつきさまはついてくるんだよ
ほらずっとみててごらん」と声がするので
振り返ると
どうやら孫を抱えた祖母らしき人
目を泳がせる幼子は
立ち並ぶマンションの隙間に輝く
大きな月を
まだ見つけてもいないらしい
歩道橋の下で立ち止まり
「ほら、がんばろう
さあ、のぼろう」
と、
小声で犬を励ましているのか
それとも励まされているのか
老犬のリードを持って
進めずにいる
老いた人
何処までも美しい夕焼けは
たちまち暮れる
疲れた足を引きずって
私が家に着くまでの間に