薔薇の痛み
白島真


沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けたまま
難破船のようにふかく朽ちていく


沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てをむなしくも夢みて
未だ塔のように屹立する痛み
薔薇の棘ばかりが名をもつ


ひそかに おごそかに
薔薇の根を抉る内部の声をきく
極北の郷土より土をあつめ
根のようにわたしを移植する
しずかに発芽した赤い蕾をそっと閉じ
瞼を重くするのは
心音はるかとおくに聞くいにしえの神話の子守歌


    
    わたしは もう 自分に水やりをしない
 
    わたしは もう 二度と

               生まれてこない



ひらひらと虚空を彷徨う偽りの朝
黄泉の国から無口な薔薇の使者が
永遠の仮面をつけてやって来る





自由詩 薔薇の痛み Copyright 白島真 2016-10-08 22:24:21縦
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