白 めぐる白
木立 悟





何も見えない湖は
来るもの 発つもので騒がしい
無数の軌跡
無の飛跡


まつろわぬものらの轟きの朝
すべてからすべてから離れてやっと
自分自身で居られる音の
近く遠く淡い背の群れ


枝を埋める巣のはざま
空と寄生木は羽ばたいて
月のまばたきのなかの森
蒼は蒼ではなくなってゆく


双つの光の歯車が
手のひらの夜に上下する
片方が欠けた道しるべ
空しか指さぬ道しるべ


身体じゅうから吐かれる言葉が
触れるものにより変わるものとなり
それらそのままの定まらぬかたちの
光や色に微笑んでゆく


紅い空と雨の無い雨
双つの震えを描く指
朝を知らない夜の右脚
冬の水辺を踏みしめてゆく



























自由詩 白 めぐる白 Copyright 木立 悟 2016-10-06 17:07:14
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