春はあけぼの
TAT
春はあけぼの
春は夜がほのぼのと明けようとする頃が美しい。日が昇るにつれだんだんと白んでいく、山際の辺りが少し明るくなって、紫がかっている雲が横に長く引いている様子が美しい。
夏は夜が素晴らしい。月が出ている頃は言うまでもなく、闇夜もまた、蛍が多く飛び交っている様子も良い。またたくさんではなくて、ほんの一匹二匹が、ぼんやりと光って飛んでいくのも趣がある。雨が降るのも趣があって良い。
秋は夕暮れが良い。夕日が差し込んで山の端にとても近くなっているときに、烏が寝床へ帰ろうとして、三羽四羽、二羽三羽と飛び急いでいる様子さえしみじみと心打たれる。ましてや雁などが隊列を組んで飛んでいるのが遠くに大変小さく見えるのは、とても趣があって良い。日が落ちてから聞こえてくる風の音や虫の鳴く音なども言うまでもなく良い。
冬は早朝。雪が降った朝は言うまでもなく、降りた霜がとても白いときも、またそうでなくてもとても寒いときに、火などを急いでおこして部屋の炭びつまで炭を運んでいくのも冬の朝にふさわしい。昼になって、生暖かく寒さがだんだんとやわらいでいくと、火桶に入った炭火も白い灰が多くなっているのは見た目がよくない。
数百年も前から
美しいものや心が打たれるものは
大きく変わってはいないから
気にすんな
そりゃあ僕らは
太い眉毛の人よりは
シュッと鮮やかな
細い眉毛の
細身の人が好きだけど
そういうのもまぁ
ただの一過性の好き嫌いだから
そんなに気にするな
君は君の胸の鼓動の早鐘を恥じる事はないんだよ
俺は俺のコンパスを信じて明日を目指すからさ
生前に一枚の絵も売れなかったゴッホや
梁に架けられたジーザスや
東京ナンバーワン・ソウル・セットの事を
ただ想っている
防波堤で
港のテトラポットの上で
神話に出てくる大型の動物のように
ボウ!
と一声
遠くに見えるタンカーが鳴いて
俺はそれを合図に立ち上がってやれやれと呟く
立ち上がってやれやれと呟くことを夢想して一秒後に実際に立ち上がってそうしてみる
陽の暖かい内に前に出てキャンプを張りたいから
明るい内に家に帰って少しでも眠っておきたいから
そうして俺は夢想してる
タンカーの鳴き声から始まる美しい五言絶句を書く事は出来ないだろうかと
秋は裏切り者
冬はホットココア