僕が転んだ
「ま」の字
僕が転んだ
白い雲がながれていた
僕が転んだ
麦の穂を風が掃いた
僕が転んだ
膝に石を刺した
しんとした痛みを
ただこらえた
なにもいない
わらい声もない
野辺のみち
そらのとおいとおいちいさな果てまで
雲はながれ
風はいちめん 麦の穂を掃き
麦はひどく渇いたようの肌を擦り列をくずし
つぎつぎに
波が僕を追い越している
考えない
けんめいに、なにも考えない
水くみにやられた子のようにたちあがり
また 歩きはじめる
おおきな波にあったら
息塞がれるか、かれないか
僕が転んだ
剥きだした膝にそそぎ
陽ざしは
とおくとおく透きとほって
道の先は
どこまでも どこまでも
風とむぎ
かぜに
起き伏すものばかり