白島真



 幼い日
 ふたりで日向ぼっこをしながら
 影をみていた
 ぼくの黒い指先が
 少女の頬に触れようとする
 と 触れるその直前で
 影だけがふやっと膨らんで
 ぼくより先 少女に触れてしまう
 何度やっても同じだった
 あの日
 陽炎だけがあたたかだった

 
 いま ぼくの影は膨らみすぎて
 誰との距離をもたなくなった
 影が距離を埋め尽くした分だけ
 ぼくは ひっそりしている

 ひっそりしていると
 影はもといた場所で
 さらに月の翳に入ろうとする







自由詩Copyright 白島真 2016-10-02 16:59:51
notebook Home