Re:文学極道
5or6

読みました。
偏見なく、文を読む。作者の性別、年、人格、知能の良し悪し、病、社会的か反社会的か、その他諸々を抜いて文を読む。
隣の会話も気にせずに、一対一、精神の結合を試みる。
海馬の横にプラグを差し、ケーブルを相手のケーブルに繋げる。
脳髄に流れるイメージが脊髄に集まり、全ての神経が文字に繋がる。
細胞は行間に挟まり、血液は段落によって流れ、心臓は韻律によって脈を打つ。
肉体は本となり、開かれた体を全ての瞳に晒す。芸術とは何か?世界に必要なものなのか?
意識と問いかけは聞こえずにただ脳髄が流れるプラグを撫でながら涎を垂らし、虚ろな目でパソコンを眺める。
体臭は隣の部屋のOLが飼っているチワワの鼻にも伝わり、一日中吠えられる。
気にしない。既に感覚は視覚のみに置き換えている。飲食も、排泄も、必要ない。
ただ指先と、視覚があれば良い。感情も必要ない。全ての知識はこのサーバーから指先に直接繋がっている。
映し出した電脳的イマジネーションをリアリズムに変換する。
その瞬間にだけ感覚を残し、意識を臀部の先にあるペニスに集中させる。
指先をキーに、視覚をブラインドに、映し出した電脳的イマジネーションをリアリズムに変換する。
指先をキーに、視覚をブラインドに、繰り返し綴る文字の配置が驚くべきスピードで落下していく。
今日は何万字で達するのだろう。やせ細った肉体は既に本だ。本は開かれるためにある。
開け、開け、むせ返るような体臭は印刷されたインクだ。嗅覚は既になく、既に視覚のみに置き換えている。
データーを指先に直接叩く、叩く、叩く。息が荒くなる。息をしていたのか、今まで止めていたのか、ペニスが膨張しないままブラインドに流れる文字は落下していく。
蝿が目の前を横切る。
幾匹かの蝿が酷評の摺り足でブラインドの文字を擦る。
静かに母親に買ってきて貰った殺虫スプレーで殺し、芸術を創生させる。
選考は近い。選ばれるのは、天から授かりし、この私だ。
優良こそ真実。優良こそ永遠。大賞こそ。神話。
来る。来る。来る。息が荒くなる。ブラインドの文字が光の速度で落下する。時を超える。
メキシコで知り合ったジェシー。イタリアで知り合ったロザリア。ポルトガルで知り合ったイザーナ。韓国で知り合ったキム。インドネシアで知り合ったメイ。新宿女学園で指名した愛子ちゃん。
来る。来るぞ。生の神話が。ブルーライトに照らされながら全ての時間はせいしする。
時空は重なり自転は止まり暗黒の穴に飲み込まれ、
テッシュはゴミ箱に消える。芸術は、完結した。

おめでとうございます。

本当に、本当に、おめでとうございました。

失礼しました。



自由詩 Re:文学極道 Copyright 5or6 2016-10-02 08:18:30
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