欲望
ヒヤシンス
背中に秋の気配を感じさせぬままお前はやって来た。
私の体内時計は正午を少し過ぎたばかり。
もう夏ではない日盛りが私の乱雑な書棚を照らし、
知らんぷりして書き物をしている私にただ時は静かに過ぎてゆく。
悲しみは私に留まり、喜びは逃げてゆく。
死の中に愛を見つけると私はお前に傾いてしまう。
生の中でお前の苦しみを見つけることが出来たなら。
でも私に一体何が出来よう?
境目を失った季節の移り変わりにぼんやりと机上を見つめる。
題名に惹かれて手に入れた哲学書をほっぽり出して、
白紙のノートに書き込んだ、ああ、無情。
私の窓辺に西日が入ってくる前にもっとお前を知りたい。
死ではなく生の中でお前を愛したい。
私が確かに生きていたという証になるように。