喪失 
白島真



 砂漠の向こうでランボーが
 蜃気楼に投網を打っている
 やつめうなぎが川底ではぜ
 永遠の焦げる臭いがすこしする

 
 酸素漂白濾紙をおりまげて
 にがい液体にわたしを落としこむ
 吸い込まれていくものはいつも
 見えない側にある

 
 指をとざして星を描く
 寂しいね と 平易な文体で
 白色矮星の冬が呼びかけてくる

 
 喪うものなど初めからなかったのだ
 食されるために育つ猫元気草は
 手厚いぬくもりと眠りの後 発芽する




             
                 


自由詩 喪失  Copyright 白島真 2016-09-30 09:39:59
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