稲刈りの朝に
梓ゆい
今日は稲刈りの朝。
いつもより早く起きた私に
父は焼きたての目玉焼きを差し出した。
「今日もよろしく頼むよ」と
小さな茶碗に白いご飯をよそいながら。
それから約一時間後
トラクターのハンドルを握る父の帽子の上では
赤とんぼが一匹羽を休めている。
二つの大きな目に空が映ると
昨日用水路に落としたビー玉の様にも見えた。
トラクターのエンジン音は
森と林に囲まれた秋晴れの県道に響き渡り
豊作を喜ぶ歌声にも似ている。
今日のうちに終わらせて
明日はみんなで出かけよう。
赤とんぼが行き交う秋の空を頭上に
トラクターは田畑へと続く砂利道を曲がった。