白のブルース
Lucy


寂しいから寂しくないふりを
しているなんてお見通しなの
寂しくないならどうして
そんな限界集落の無人駅に
会いに来ないかなんて言うのよ
あなたの孤独を映し出す
鏡のように澄んだ湖はもうどこにもない

若い人たちに慕われて
元気をもらっているよって
相変らず毎日忙しくてさ
なんていうなら
私のことなんて
どうして思い出したのですか

あなたが老人になっても
私はちっともがっかりしない
だけど
もう少女ではない私を見て
あなたが落胆するのは許せない
だって知っている
わたしが少女だったから
好きだったんでしょう

あなたがどんなに孤独でも
私 鏡にはもうなれない
自分一人の孤独でたくさん

しろく濁った湖は
誰の寂しさも映し出さない
あなたが思い出す
残酷な恋に死ぬまで踊る
赤い靴を履いた少女は
どこにもいない

存在が皮膚を爛れさせ
世界はアレルギーのように
私を馴染ませなかったから
あなたになりたかっただけ
強くて賢くて寂しい人に

アラスカの荒野で
いきだおれるのが理想だなんて
きざなこと言って
寂しがらせた

今はわかるよ
アラスカになんか行かなくたって
吹雪にまかれ
方向も見失い
たった一人で死を待つあなたに

手を差し伸べる代わりに
私は歌う
あなたのために
あなたの耳には聞こえない
白い白い吹雪の歌を










自由詩 白のブルース Copyright Lucy 2016-09-29 23:46:55
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