うさぎのダンス
ただのみきや

赤い目をしていま
なにを読み
どこを跳ねるのか


あなたは謀った
和邇ワニたちの背を戯れ跳ねながら
目指すところへ近づいた時(それは幻想だった)
傲りと嘲りが
鈴のように唇からこぼれて水に跳ねた
美しい余韻 裳裾のたなびき
――素早く誰かが捕まえる!
和邇ワニたちのハはあなたの衣を剥ぎ取った
兎のコスプレもハンドルネームも
みみず腫れの感情は膿んでもチを流さない
ただカラフルな砂粒が口から止めどなく溢れ
見せたい真実だけを切り貼りした
張りぼての素体を沈没させる
あなたは重い虚像と括られたまま
渦潮に飲み込まれ
怒りと憐憫と羞恥
三匹の蛭に内側を啜られながら
夜にピンで留められた白黒写真のように
身動きできない孤独の底へ


青い光の砂浜で
あなたは神々の呟きを聞いた
八十人の神々が再生の道をレクチャーする
神々には顔がない
ただ書き込みだけがある
救済のハウツーの求道者たちに
ヤオロズの集合知は量産された天の沼矛を授けた
新しい創造を約束して
それは幼児の絵のように素早く描かれ
写真の料理のように完璧で腹を満たさなかったが
塩辛さが乾く暇もなく
爛れた魂の被膜は引き攣った
シヲ風を読めば読むほど耐えられないほどに
シャットダウンしても声なき声は止まず
回路を敷いて走り回り
止めようとする者を轢き殺した
夢を見る才に恵まれた者は悪夢からも愛されるのか
再び暗い渦に飲み込まれ
乾いた浜辺へと吐き出され
青い光
神々の呟き


いつか救いのヌシが訪れて
本当の回復と再生の道を示してくれる
そう誰かが言った
神代の話だ
あなたの中のあなたが少女の唇で
告発する
挫折した男が酔ってわめくように
 
 
《シは手段として訪れて
 やがてその座は入れ代わり
 目的として支配し
 犠牲を惜しまなくなった
 わたしは
 すでにヌシを殺して
 シへと変えてしまったのだ》


ああ肌蹴ハを持ちトランスダンス!
だがアメノウズメのようには神々を虜にはしなかった
コジキのウサギの
ダンスのセンスに
和邇ワニたちは奇声を発し
八十人の神々がほくそ笑む
(やつらの実体はウサギ以下の臆病なサギ師だ! )


あなたを洗う真水はどこか
あなたを包む子羊の毛
のように柔らかい蒲の穂はどこにあるか
赤い目をしていま
なにを読み
どこを跳ねるのか




              《うさぎのダンス:2016年9月24日》














自由詩 うさぎのダンス Copyright ただのみきや 2016-09-24 22:01:56
notebook Home 戻る