美しき沈黙
ヒヤシンス


 沈黙を身の回りに置く時、私は決まってここに来る。
 森は必ずしも沈黙ではないが、きっとそれは心の状態なのである。
 沈黙を私は求め、愛でる。沈黙は私に寄り添う。
 物事の美しさは常に変化するが沈黙の美しさは不変だ。
 
 森の木々は色付き始めている。私は黙ってそれらを見つめる。
 時に音楽が聞こえ、時に話し声が聞こえ、時に風が吹く。
 そうだ、風。梢を揺らしながら知らん顔して吹きすぎる風。
 恨めしく思う、それもきっと心の状態なのだろう。

 耳に残る風は沈黙を許さないが、私はそれをも愛す。
 風は沈黙を私に印象付ける。
 画家がキャンバスにこれぞという色を塗りたくるように。

 森に安らぎを得ている私は今日も生きている。
 沈黙という衣を纏って私はここにいる。
 美しさここに極まれり、なのである。


自由詩 美しき沈黙 Copyright ヒヤシンス 2016-09-24 02:41:06
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