絵本
5or6

もうこの世にはいないように
白い墓標の文字を眺めている
すると小さな手が払いのけて
絵本を読んでとせがんでくる

漂う意識は
もう我が子を眺めるしか
楽しみがないのかね

幽体離脱をしたまま
いもほりの本を読んで
誰もいない場所で
子供が笑う

返事をしないまま
おやすみをいう
返事のないまま
おやすみと灯りを消す
誰もいないまま
食卓の食器を片付ける
自動食洗機の音が鳴る
ガタガタ・ガタガタ
寝床に戻ると
妻と子供が寝ている
手を見ると
昨日仕事で付けた切り傷がある
寝返りをしすぎて
あらぬ方向の我が子を
一緒の方向へと戻す
散らばっている絵本を掴もうと
手を伸ばし
開いたページを見たら
そこに妻と子供が寝ていた







自由詩 絵本 Copyright 5or6 2016-09-22 06:27:42
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