竹花
為平 澪

先祖代々の墓石の隙間を潜って 緑の節目が
石塔の地下から 企みを生やす

萎れたシキビや花筒の中で息絶えた小菊を
嘲笑うかのように石塔の狭間を一本の青竹が
墓場の敷地すら貫き
天から墓場にいる者たち全てを見下げていた

広がりすぎた葉先の陰から弱い陽射しだけが
苔生した墓石にこぼれている

昨年 父は育ちすぎたその竹を
錆びた大型鋸で根元から切り落とし
傾いた墓石や石塔を真っ直ぐに立たせた後
今春 自分が伐採した竹のように倒れて
この世を去った

初盆 父のために墓掃除に連れ立つ母子
墓下に繁茂する 竹の謀を見抜いた母が
その企みの芽を 鉈で打ち付け、打ち付け
取り除いていく
排除された竹の遺言を受け継いだかのように
周りの墓石が母を睨み付ける

流れていた微風が瞬時にして凍ったまま
墓と母の間を通過した

薄暗い藪の中に白い粉のような針の花が
二人の背中や肩に うっすらと降りかかる
(今年は竹花が、よう、咲くからな・・・
誰ともなく正面の墓石に上目遣いで告げる母

炎天
西を向けば川岸の景色までも見える程に
枯れ果て乱倒した多くの竹を強かに眺め
咲いてしまった後の昔語りを語っているのか、
母は合掌したまま 父の墓石に言葉をこぼす





自由詩 竹花 Copyright 為平 澪 2016-09-17 21:55:43
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