土曜の朝、手つかずのものはそのまま
ホロウ・シカエルボク





女たちは街路に集まって
気に入らない誰かの陰口を叩いてる
根拠のないことで他人を叩けるなんて
随分と罪深いいきものだ
空はキレの悪い小便のような雨を
昨夜から垂れ流していて
トタン屋根は子供が戯れる
脈絡のないジャンベのようだ
明日は晴れるか、と
窓に問いかけて
晴れたらなにをするつもりなのかと
自問して笑い飛ばした
道端には熟れる前に落ちて
腐った悪意ばかり転がっていて
散歩をするとひどく靴が汚れるんだ
オー、グローリー、ハレルヤ
賛美歌がガラスに傷を引くように流れる
俺は目を細めてテレビジョンを眺める
そのあとコマーシャルのBGMで聞こえた
ディランの叫び声はやっぱり壊せないサボテンだった
「したいことをするだけさ」
あの男は初めっからそう言ってる
着火の鈍いコンロが湯を沸かすくらいの時間で
モーニング・コーヒーは作ることが出来る、とはいえ
飲み干す時間は丁寧に淹れたコーヒーとそんなには変わらない
要は密度の問題なのだ
忘れられないものを嚥下するには
目を凝らす激しさが必ず必要なのだ
ノートには書きかけの詩、もしかしたら
それは一生書きかけのままでそこにあるかもしれない
ゆきずりの女のようなもので
もう一度手の取るかどうかは神のみぞさ
テレビを消して
カーテンの隙間から空を見た
アドベンチャー・ゲームのバッドエンドの色合いだ
飲み干したカップを片付けて
イギー・ポップの古い歌を口ずさみながらシャワーを浴びた
奴を一番パンクだと感じたのは
「飽きた」と言ってシャンソンを歌い始めた瞬間だった
湯の温度はいくら調整してもフラフラしていたが(ブラー・ブラー・ブラーではなく)
だからといって近くの壁を叩いたりはしなかった
中身に踏み込めないから外面にあたるなんて
サイコーにみっともない人間のすることだ
バスタオルは何度洗濯してもすっきりしない感触を残す
こんな天気だから仕方がない
読みかけの本を開くと
休日はそれだけで過ぎていく気がした
途中にあるものを少しずつ片付けていく
目を凝らす激しさが必ず必要なのだ
携帯に台風のニュース
いっときしか荒ぶれない早漏なんか
知ったこっちゃない
好きにすればいい
ページを捲る音が俺を
無意識の階層へ連れていく
そこで誰かに出会うことが出来たら
アドレスを書きとめることを忘れないようにしよう






自由詩 土曜の朝、手つかずのものはそのまま Copyright ホロウ・シカエルボク 2016-09-17 09:38:53
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