いつもの前兆
坂本瞳子
忘れていた
左側の肩甲骨の少し内側の背骨に近いところ
ここに熱を感じるときは高熱を発する前兆
気持ち悪さ
むかつき
身体中の節々の痛み
悪寒
種種雑多がごった煮されたように
悪いものすべてがこの身にふりかかる
体温計で測ったが最後
三八度の掲示を見るや
重病人と自覚し
すべてのやる気を失い
ただ眠ることに
ただ汗をかくことに
専念する
そして覚悟を決めて赴くのだ
白い巨塔へ
そして回復の後は
また忘れるのだ
肩甲骨の内側の熱がなにを意味するのか
高熱など
一年に一度も出すものか