時流〇時刻
ひだかたけし
この界あの界しとしとしとしと雨の降る
人人人人泣き笑い
驚き掴んでは失われ
雨は降って沢成り川成り海成り波うねり
銀河宇宙の渦に巻き戻され
しとしとたんたん時の過ぎる
己、胸奥の空洞
毎夜毎朝ミシリミシリと
無音の軋み開き続け
夜明け前に目覚めては
キャベツの千切り納豆サラダ
マヨネーズたっぷり掛け食らい
眠剤数え飲んでは昼前まで眠る
愛娘の幻に頬を突かれ目覚ては
洗面も憂鬱そこそこに着替え
外に飛び出し歩く歩く
ひたすら歩く
街抜け川越え幹線越え
やっと田畑の彼方に蒼い山仰ぎ
ああ此処なら記憶の痕跡ももう尽きた
と頭カラッポ 声響く
[宇ノ舞う 、 燃え立つ魂郷 、 未だ遥か]
キを取り戻し血流熱く帰途につく
こんな生活がいつまで持つかと
自問自答の疑微かに湧きつつ
中途頃には疼痛も始まり
それでも足取りはあくまで軽く飄々と
この界あの界シトシトシトシト雨の降る
人人人人育ち自立し獲得し
築き衰え病んでは失われ
雨は降って沢鳴り川鳴り海鳴り波砕け散り
未知宇宙の渦に巻き戻され
死ト死ト誕誕 、時ノ流れる。