喰らう音
あおい満月

じっと空間を見つめていると、
何かが聴こえてくる。
実際には何も聴こえないが、
目にうつるものが音を帯びてくる。
色にも音があるのか、
音に色があるのか、
空間は息吹を宿して、
この身体に迫ってくる。



強い風が、
この肩を横切っていく。
肩に鋭い痛みを感じて振り返ると、
腕から血が出ている。
見えない獣に喰われたのだ。
音になった色が、
見えない獣になって私を襲う。
そこに意味があるのかはわからずに。

**

何かが手のなかで膨らんだ。
抱え込んでしまったものが
成長して手のなかで、
人形になって動いている。
きらりと光るものがある。
人形になったものが目を開いて、
私を直視する。
その瞬間、
音を立てて指を食いちぎろうとする。
一抹の風が吹いた。
私の両腕は、
何者かに喰われた傷跡に、
血がにじんでいる。



自由詩 喰らう音 Copyright あおい満月 2016-09-14 21:35:31
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