恋のようなもの
ただのみきや

風は奏で 
光は描く
ハリエンジュのさざめきに
まなざしは戸惑い
優雅に失速する
水面に解ける止まり木
鳥は魚を続けた
裏腹に
なめらかに
時間には抜け道がある
探しても見つからない
あるのは徴 
あるいは記号
無数にあるひとつが作用して
内側の戸が開く
窓からは絶えず波が
寄せて引いてを繰り返し
古い波と新しい波がせめぎ合い互いを打ち消し合った
止まり木にすぎない肉体
漂う流木を枕に
魚/鳥は見た
昼下がりと黄昏が溶け合うひとつの
幻の入り江を
《断片であり模倣
《現実の横顔は冷やかな黄金で
《取り立てる何もかも
一枚のフィルムのようなものが視界いっぱいに広がって
ゆっくりと近づいて来る
その少し冷たい垂れ幕に指先から触れる
ように突き抜けて
薄暗い時の向こうへ流れ出す
ハリエンジュのさざめき
夜は抱き
冷気が濡らした
棘のある手で
あやす子供たちの幻
揺らめくあいまいに
喪失が遠く灯って
わたしはわたしへと帰る 
道すがら薄闇に
佇む秋桜
また
懸想して



   
          《恋のようなもの:2016年9月14日》







自由詩 恋のようなもの Copyright ただのみきや 2016-09-14 21:18:30
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