九月の残暑
……とある蛙

天気が良いなどという言い回しは誰が考えたんだか。
九月の晴れ渡る青空は凶暴としか言いようの無い
殺人熱光線の矢を地上に叩き込む。
しかも肌に纏わり付くスチーム爆弾を抱え込んで
アスファルトが歪んで見え
路上は空気がゆらゆらと揺れている
いくらかの食い扶持目当ての
職安を通さない労働者たちが
暗い目をした手配師を待って
ターミナルビル手前の歩道の一角に行儀よく並んでいる

爪を噛みながら、ターミナルビルの向かいのビルから
それを眺めている実態の無い自分は
腕時計を忘れたためいつまでたっても午後1時40分
道は次第にメルトダウンし始め、うねり出し
クラクラする目眩ましは夢ではなく

クラクラドキドキ
クラクラドキドキ
クラクラドキドキ

心臓の鼓動が嫌に大きく耳の中

クラクラドキドキ どっくんどっくん
クラクラドキドキ どっくんどっくん
クラクラドキドキ どっくんどっくん

空を見ているとまた

クラクラドキドキ どっくんどっくん
クラクラドキドキ どっくんどっくん
クラクラドキドキ どっくんどっくん

目的も無く歩き出すとき
目的も無い自分が歩道に溶解し出す
地面に有毒地下水として染みこんでゆく。


自由詩 九月の残暑 Copyright ……とある蛙 2016-09-13 14:33:11
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