朝のひととき
葉月 祐
ベッドの中という
わたし一人分の天国から
のそりと抜け出し
あくびをしながら迎えた朝
カーテンを開け 光を浴び
青空を見上げながら
残りの眠気を
はらい落とした
シャワーの様な朝陽は
今までよりも少しだけ
温もりが足りない
ハンガーにかけてある半袖を
掴もうとしたその手は
朝の冷えに耐え切れずに
長袖の入った引き出しを開けた
『最高気温は25度』
タブレットの画面の表示を見て
十日程前の気温を思い出す
あの暑さはいつの間に過ぎ去ったのだろうか
長袖でも寒いと感じるので
いつものカーディガンを羽織り
熱いコーヒーを入れる
『最高気温は32度』
アイスコーヒーで一日をやり過ごしていた
十日程前の暑さが もう懐かしい
ゆったりとした土曜日の朝は
何もなくても幸せだなと
こぼれてしまう独り言
そんな心地の良い朝のひととき
静かに香るコーヒーに
眼鏡をしっとり曇らせながら
朝 という時間を楽しむ
遠くの方から祭の囃しが聞こえてくる
そういえば今日は地元の祭の日だ
懐かしいその音楽に耳を傾け
わたしは小さな頃を思い出しながら
今朝二杯目のコーヒーを入れている