花束の人
葉月 祐
あなたはそこに立っていた
無くなる事のない
花束を抱えて
何も言わずに微笑み
太陽を背にしながら
あなたは
その花束を抱えていた
擦れ違う見知らぬ人にも
一輪 一輪 花を差し出し
ありがとうと 相手が笑うと
あなたは優しく微笑んで
何も言わない 何も求めない
わたしは
幸せのかたちを初めて知った
目の前で起こっている
その出来事こそが
幸せの姿なのだと思う
いつも
派手な色の花は無くて
光を和らげた様な
触れたら無くなりそうな
そんな花の束を
あなたは抱いている
花は消えずに それぞれ凛としている
あなたも多分その花達と同じ
幸せそのものなんでしょう
だから花は無くならない
あなた自身が
花の生まれる泉の様なもの
溢れる様に その花は増える
永遠に枯れない花は無くても
永遠に消えないものがある
それが 幸せ なんでしょう
あなたも そうなんでしょう
そんなあなたをいつも見付ける
わたしもまた 幸せに違いない
明日も変わらずに
そこにあなたは立っているだろう
優しい色の花束を抱えながら
何も言わずに微笑んでいる
あなたは 何も求めない