君からのたより
葉月 祐
《メール 未読:1》
本に夢中で放置していた携帯には
君からのメールが届いていた
私が行けないような土地まで行く
そんな仕事に就いた君から届く
久しぶりの定期便
今回はどこからだろうか
添付画像を開けば
そこには
美しい町並みと
橋、だろうか
どちらも澄んだ青空と共に
写されていた
本文はいつも短く
それはある意味『君流』の
お決まりのメッセージ
「今日も生きてます そっちは?」
変わらないねと言えば
君はガックリするんだろうか
それとも笑うだろうか
とりあえずどこの国の画像かを
教えてはくれないだろうか
そんな言葉は 今は飲み込んだ
変わらないでいて欲しいなと思う
君のそんな優しさは
それは長所とかじゃなくて
君自身なんだから
遠出をしたことも無い私は
君が送る画像の山を見る度に
そこに実際に行ったような
そんな愉しい気持ちになる
小さい頃から一緒にいる事も多かったから
君は私のいろんなところを知っていて
だからメールの文面はあんな風で
未だに受け取る度に笑ってしまうんだ
メールの返事
打ちますか
とりあえず
「生きてまーす お元気?」
と打った後に
君が読み飛ばしたくなるような
長い手紙を入力するつもりでいる
君もおそらく覚悟しているんだろう
…
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《メール 送信しました》