蛾になりたい
ピッピ
ねえ、いいから
と手を引っ張られ
誰もいない女子トイレに連れて
から
か
ら
少しだけ開けた窓こぼれる斜陽突き刺す
笑顔 舞い込む蝶々を、ちょうどよかった
と少しだけ骨張ったその掌が優しくつつんで、くしゃ
くしゃっ
という 命が終わるのに必要な音を聞いた
わたし、自分より弱い者が好き
含羞んだ 突き刺す斜陽
ら
か
から
閉まる窓舞う羽根命だったもの
わたしね、蛾になりたいの、生まれ変わったら
自分勝手に、行きたい
僕の中で回っていた時計の歯車の音とは
別の歯車の音が聞こえ始めた
それじゃあねとにべもなく足早に上履きの音が消えて
鍵も掛けられていないその部屋で茫然自失
あの子が最後に呟いた
うそだよ
が
なにを指したのかも知らずに
赤い色はギターの色
あの子の蝶が死んだとき
何色の血が流れていたのか
蛾になりたい
わけもなく醜さで分類された
この世界に生きていたい