その都市 3
非在の虹

その都市には生の共鳴はないが、
死の残響はあまたある。
墓地はまさに
高層ビル群と相似形のように
墓石が林立し
ビル群の前面に拡がっている。
つまり高層ビルを背景とし、
そのミニチュアがまず訪れた者を迎える感じだ。
しかし墓の中に死者は眠っていない。
その都市の徹底性が生者の痕跡を消すように
墓石がただ並んでいるだけなのだ。
墓石をよく見れば一つ一つに人名が掘られてはいる。
その名の人々はどこへ行ったのか、あるいは
存在しなかったのか。
それを問う者もいない。


自由詩 その都市 3 Copyright 非在の虹 2016-09-04 18:56:39
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