あゆみ むらさき
木立 悟
氷の川 紙の舟
暮れを旋す 空の浪
小さなけだもの
踏みしめる葉
神棚の窓の下の囲い木
降りそそぐ見えない雪のようなものから
何かを護りつづけている
いつか朽ちてしまうまで
幼いものが
幼いままに残るかたちが
草木に覆われ
途切れた径にまたたいている
枝と枝のはざまに満ちる
無数の文字の幾つかが燃え
指の前をすぎてゆく
隠された手のひらを照らしながら
暗い空の葉
灰 銀 鉛
緑ではなく
夜の名ではなく
かがやく直前に目を閉じると
知るはずのないかがやきのかたちが
空に落ちる瀧のように
轟き 轟き 轟きつづける
冷たい水がほしい
巡る血流を
呑み干す浪であれ何であれ
支流を許さぬひとつがほしい
夜の音
螺子を解く音
緩やかに礎が瓦解する日に
手に手に花を持ち集まる影
蜘蛛の巣に降る雨
窓ひとつに消える色
夜を見つめる幼いけだもの
大きな葉を踏みしめ 踏みしめる