冬物語
tonpekep
海には
ばらまかれた空が広がる
雲はときどき
空を恋しがって飽和する
眩しいくらいに雨を降らせたなら
やがて雲は白い波になる
ふゆの海では
鳥は幾千もの残照と背中合わせで
お腹はいつも空腹で
魚の声が聞こえたなら
きらきらしながら
海に落下してゆく
何もないことへの愛着が
わたしのこころを豊かにする
鳥の嘴には
魚の代わりに空のしずくが零れている
全ての遠ざかるものに
わたしは無言でありたい
どこかの夜がここでの朝に
ここでの朝がどこかの夕べに
くり返し再生される
空を両手に掬えば
それが銀河系であることさえ
わたしは否定できずにいる