おめでとう
梓ゆい

9月1日の午後

朝から磨いた仏壇に手を合わせ
ショートケーキを一つ供える。

この日は亡き父の誕生日

街で年頃の親子連れを見かけると
父の居ない寂しさを思い知らされて
妬みの感情が見ず知らずの他人に向く。

お父さん、お誕生日おめでとう。

笑顔でケーキを頬張る父の姿が見えるようで
悲しくて息が出来なくなる。

せめて9月1日の区切りには笑顔を向けないと
父はもう二度と笑わなくなるかもしれない。

私はこの日
逃げ出したい気持ちを抑えて
仏壇の前に座り続ける。

綺麗に食べ終わり
おいしかったよ、の一言が聞こえるまで。

今日はもう居ない父の静かな誕生日。


自由詩 おめでとう Copyright 梓ゆい 2016-09-02 02:06:03
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