食べるということ
坂本瞳子
空腹ではないのに
時間が来ると食べる
食べ始めると
食べ過ぎる
空腹ではないのに
食べずに過ごすと
いつまでも食べない
絶食するのではなく
食べない
だから
時間が来たら食べる
時間を逃すと食べない
食べずに健康でいられればいいのに
とは思わない
食べることの喜びを知っているから
嫌いなものを食べることの忍耐も
まずいものを食べたときの辛さも
食べきれないときの気まずさも
いろんなことを知っているけど
いい歳してるんだから当然のこと
食べずに済んだら悩みが減る
大した悩みなど持ち合わせていないくせに
くだらないことをぐだぐだと
深刻に悩んでる振りして
人生を謳歌している気にでもなっているのか
手が届くものをおいしく食べられればそれでいいや
そんな気持ちにはとてもなれない
一日三食食べられることの幸せを噛みしめて
今日もお食事するのだ