薄紅・青・黄金・白
葉月 祐

花が開き薫り溢れて
花びらおどり 心浮かれる
無色だった視界は 薄紅に染まる
人の心を穏やかにしていく
時にはその心 そっと狂わせて
最後ははかなさと共にゆらゆらと散る
木漏れ日に吹きつけた柔らかい風が
切なさに似た何かをこの胸に残して
春に降る雨が作る 波紋の様に



青葉は急かされる事もなく
目を覚まして 姿をあらわした
太陽の光をまき散らす様に
鉢植えの中には眩しい生命の芽達
様々な青色を反射させる 激しい熱と共に
若々しい息吹が葉を鳴らし 夏の知らせを届け
わたし達に一時の涼を運んでくる
あの日 わたしの髪を揺らしたのは
きっと木々の吐息の名残だった



空は遥か遠い この手はもう届かない
深く広く透き通る空から
懐かしい風の香りがする
正体不明の甘い風が季節を告げる
銀杏並木に 微かに色の違う葉が混じる
この道は もうすぐ黄金色に変わるだろう
その道を わたしは踵を鳴らしながら歩き
人生の中に一瞬だけおとずれる恋の様に
短い今を全身で愉しみ 君とともに生きよう




あたりは徐々に静寂に支配されていき
気付けば冷えた枯れ葉の絨毯が敷かれていた
もうすぐだねと マフラーをまき直す
隙間から覗く空は 黒みのある重い青色
張り詰めた空気に心まで引き締められ
振り返り「どの季節も少しだけせつない」
なんて 思ってしまう

鼻に冷たさを感じた時


空から


空から









自由詩 薄紅・青・黄金・白 Copyright 葉月 祐 2016-09-01 22:31:47
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