入り口
葉月 祐

真綿の様な柔らかい空気を
この身に纏いながら
穏やかな朝の中
坂道を自転車で走った

髪がなびいて流れていく

まだ微かに
陽射しは強くて
今朝の風は ほんの少し甘く感じた


赤信号で立ち止まり
ふと見上げた空は
広く 高く 深みを増した
青よりも深い青色
掴めそうに感じていた雲も
いつの間にか遠くへいってしまった

そういえば 今日は
朝とは言え
カーディガンを羽織って家を出た
用事が済んだ頃には
脱いでしまったけれど

そこかしこから
ぼんやり しっかりと
秋の気配がする


季節は立ち止まる事も無く
誰にも気付かれない様に
ゆっくりと歩いていて
こちらへと近付いてくる

流れてきた風に混じっていた
甘い匂いは
私が昔から知っている
秋の入り口の薫りがした

それが何なのか
未だに分からないけれど
わたしは
それこそが秋の匂いなんだと
何故か知っている


もうすぐ庭に咲く秋の花達は
今年は何色になるだろう
つぼみはまだ 小さくて
わたしの心が先に膨らみ始めて
弾けそうになっている







自由詩 入り口 Copyright 葉月 祐 2016-09-01 20:48:47
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