残余の火
ただのみきや

夏の終わり
などと書き出して
景色を眺めまわし
残りの年月を数え切れたかのように
何もせず
何も求めず
人に倦み
風の仕草を見つめては
瞑り 
欹て
ぼんやりとまた開き
終わる夏
始まる秋
吐息の継目もなく
絵具のように混じり合い
心を失いからだを残す
からだを失い心を残す
ことのありふれた
気づきの揺らぎも
地上に小さな影を見出す
旅立った鳥のように
風と化し
純粋に
透過させる
かつて理由であり得たものたちを
秋はためらいもなく
色を施しまた剥ぎ取って
終わりを疑わず
扉を自らの内に少し開いたまま
静かな訪れの
兆しに頬を寄せる
ように育んで
夢先の白へ
――瞬く間に燃えて燃え落ちる色彩のうねり
残らないものを書き残す
無性な空の高み
切れるような青さにも慣れ果てて



      
              《残余の火:2016年8月31日》










自由詩 残余の火 Copyright ただのみきや 2016-08-31 20:42:53
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