落とし子の歌
ただのみきや

タツノオトシゴよ 台風に乗って疾駆せよ
まだ見ぬ父を夢に見て
ゴッドジーラは堕落しない正義の味方などに決して
熱線を吐いて世界を滅ぼせ


タツノオトシゴよ 敗北を振るい落せ
舌先の魔術で意味や価値を見事に中和して
ただ一つの神話が歴史であると
アニメーションで世界を転覆させよ


タツノオトシゴよ だがすべては幻想だ
おまえはちっぽけな魚で竜ではない
流れ着き寄り集まった人々の月のような嘆息と
水のような歌声に回帰せよ


タツノオトシゴよ 傷つき入り組んだ時間の身体へ
いくつもの秘密を鎧戸で隠し忘却せよ
ネズミどもが食い荒らし痩せ細っても
季節の衣を纏え真新しい神楽を舞う子どもたちは 


おまえの懐から歌を聞くだろう乳のように
落とし子は 音・詩語になり呪いは祝福へ




            《落とし子の歌:2016年8月24日》








自由詩 落とし子の歌 Copyright ただのみきや 2016-08-24 23:41:00
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